地球温暖化に伴う海面上昇や、世界各地で頻発する大型台風・記録的豪雨。日本でも毎年のように河川の氾濫や浸水被害が発生しています。こうした水害に対して、世界で最も進んだアプローチをとっているのが、国土の約4分の1が海面下にある「オランダ」です。従来の「堤防で水をせき止める」という考え方を大転換した、オランダの先進的な治水・防災対策を紹介します。
堤防で防ぎきれない水には「スペースを与える」という大転換
かつてのオランダは、巨大な防潮堤や強固な堤防を建設して水の侵入を防いできました。しかし、気候変動による大洪水の多発を受け、1990年代後半に方針を大転換しました。それが「Room for the River(川のためのスペース)」プロジェクトです。
- 堤防をあえて下げる・下流を広げる:川に流れ込む水量が限界を超える前に、あえて意図した場所に水を逃がすため、川の底を掘り下げたり、堤防を内側に後退させて川幅を広げたりします。
- 氾濫原の再自然化:増水時に水が溢れるための湿地や緑地(氾濫原)を整備し、普段は公園や自然保護区として使いつつ、災害時には巨大な遊水地として機能させます。
水位の上昇に合わせて浮上する「フローティングハウス(浮体式住宅)」
オランダの都市(アムステルダムなど)では、水害に強い究極の住まいとして「フローティングハウス(浮体式住宅)」の実用化が進んでいます。これは、水の上に家を浮かべる建築技術です。
- 浮かび上がる仕組み:コンクリート製の「中空の基礎(船のような構造)」の上に家を建て、水位の上昇に合わせて家全体が垂直にスライドして浮かび上がります。これにより、どれだけ洪水が起きても室内が浸水することはありません。
- インフラの維持:電気、水道、下水の配管には柔軟性のある伸縮式ホースが使われており、家が浮上してもライフラインが切断されない設計になっています。
日本の家庭でできる水害への備え
オランダのようなフローティングハウスを導入するのはすぐには難しいですが、日本に住む私たちが今日からできる水害対策もあります。
ハザードマップで自宅周辺の浸水リスク(想定される浸水深)を正しく確認すること、そしてゲリラ豪雨や台風による浸水から家を守るために「給水タイプの土のう」や「浸水防止シート」をガレージや玄関用に備蓄しておくことが、非常に実用的な水害対策となります。